6月、しっとりとした空気のなかにも、夏の気配が少しずつ混じってくるこの季節。窓から差し込む光がやわらかくて、なんとなく人の言葉にも、心にも余白ができるような気がします。
「子どもの頃の夢は、バレリーナか宝塚の男役でした」。
そう話してくれたのは、現在キャスティング講師として活躍されている高木里佳先生。幼い頃は舞台の上に立ち、華やかな世界で表現することに憧れていたという彼女ですが、今はブライダルの現場を“舞台裏”から支える仕事に情熱を注いでいます。
高木先生はもともと現場に立ち、長年にわたって数々の結婚式を彩ってきたベテラン司会者です。現在はその経験を活かし、キャスティング業務を担いながら、後進の育成にも関わっています。
印象的なのは、「キャスティングに就いて、自分にしかできない仕事があることに気づいた」と語った場面でした。キャスティングに転身した時は、長年の司会のキャリアから離れることに不安もあったはず。また、この業界を知らない方には「人に役割を充てる事務作業」のように見られがちですが、実際はそうではありません。
高木先生はその実情をこう語ります。
「キャスティングの仕事、実際は、現場を知っていないと難しい業務。たとえば、進行の流れを読み、司会者の個性を見極めて担当を考えたり、会場のカラーやスタッフの雰囲気に合う人材を選んだり。そこには経験と感覚がかなり必要です。ブライダル経験者だからこそ流れを理解し、スムーズに行える。未経験の人には想像以上に難しい仕事なんです。」
実際、高木先生のキャリアは“現場での肌感覚”を育ててきた時間の積み重ね。現在はキャスティング講師として、これから業界を目指す人たちに自らの経験を伝える立場にもあります。単なる「知識」ではなく、「現場を知っている人」から学べるという点で、高木さんの存在は非常に貴重です。
「ひとつひとつの現場で丁寧に仕事をしてきたからこそ、今につながっている。若い方たちにも、経験は無駄にならないということを伝えたいですね。」
そんな高木先生、忙しい日々の中で楽しみにしていることがMLB(メジャーリーグベースボール)のテレビ観戦。メジャーリーグ観戦でリフレッシュしながら、現場を支える仕事にも全力で向き合う。表には出なくても、人を輝かせる力を持つ、静かな光のような存在です。
ハピ子