音楽を通して、人の心を動かす仕事へ
「好きな音楽に関わりたい」というシンプルな想いが、今の仕事の原点でした――。
そう語るのは、ハセガワエスティのブライダル音響スタッフであり、後進の指導にも携わる白井和樹さん。穏やかな笑顔の中に、音と人に向き合うまっすぐな情熱がにじみます。
子どもの頃から音楽を聴くことや楽器を触ることが好きで、高校時代はギターとベースに夢中だったという白井さん。
「帰宅部だったんですけど、毎日ひたすら練習していました。音を出す瞬間が楽しくて仕方なかったですね」と笑顔で振り返ります。
音楽の道を志して音響の専門学校へ進学。当初はライブやバンドの音響を目指していたものの、在学中にブライダル音響の仕事を知り、その魅力に惹かれました。
「幸せな空間を作れて、好きな音楽にも携われる。こんないい仕事、他にないと思いました。」
音楽が人の心に寄り添う瞬間を、現場で形にする。
その出会いが、白井さんをブライダル音響の道へと導きました。
曲の提案にも、オペレートにも想いを込めて
ハセガワエスティに入社したのは2013年。アルバイトとして現場に入り、2016年からは正社員として本格的に音響業務に携わってきました。以来、数多くの新郎新婦の一日を音で支えています。
「この道を選んでよかったと感じるのは、音楽の知識や経験が誰かの笑顔につながった瞬間です。たとえば、新郎新婦に曲を提案して“これ、すごく好きです!”と喜んでもらえたときや、専門学校で学んだバンド音響の知識を生かしてオペレートがうまくいったときですね」
音響の仕事は、会場全体の空気感を読み取り、音で空間をデザインする。そこには、目に見えない“伝える力”が求められます。
「空間を作る仕事なので、口で説明するのが難しいこともあります。だからこそ、どうすれば相手に伝わるかを常に考えています」
白井さんの座右の銘は「視野を広く」。
すべてを客観的に見て、どうすれば相手が喜ぶかを意識する。それは自分の担当外でも気づけるように。結婚式はチームでつくるものですから、誰かが困っていたら自然に動けるように。
音響技術だけでなく、人との関わり方にも白井さんの志の高さと姿勢が表れています。
教えることで見える、新しい景色
最近では、新人スタッフやサウンドクリエーターの教育に関わることも増えました。教える立場になって、あらためて気づくことが多いといいます。
「新人に教える中で、自分とは違う考え方や視点に出会うことが増えました。『なぜこのチェックが必要なのか』『もっといい方法はないか』と考えるうちに、自分の理解も深まるんです」
教えることは、教わることでもある。
白井さんは、日々の中でその意味を実感しています。
「自分が教えたこと以上のことを生徒や後輩が自分で考えて実践してくれたとき、一番うれしいですね。“教える”って、一方通行ではなくて“一緒に成長する”ことなんだと思います」
名前を呼ばれる瞬間に、すべてが報われる
数多くの結婚式を支えてきた白井さんの心に、今も強く残る瞬間があります。それは、結婚式の結びの挨拶で名前を呼ばれたときのこと。
「『音響の白井さん、ありがとうございました』って言われたときは本当にうれしかったです。
エンドロールに自分の名前を入れてくれた新郎新婦もいて、“音”を通じてつながれたことを実感しました」
音で空間を包み、人の想いを支える。
そんな小さな積み重ねが、白井さんの中で確かな誇りとなっています。
これからも“視野を広く”、音で幸せをつくる
高校時代から愛してやまないBUMP OF CHICKENをはじめ、邦ロック全般が好きだという白井さん。音楽への情熱は、今も変わらず日々の仕事に息づいています。
「音響の仕事って、主役にはならないけれど、誰かの大切な瞬間を支える仕事です。だからこそ、音ひとつで空気を変えられるような存在でありたい。」
音楽への情熱と、人へのあたたかなまなざし。一本筋の通った潔さも感じます。
「音も人も、一つひとつ違うから面白い。これからも“視野を広く”、音で幸せをつくる仕事を続けていきたいですね」
白井和樹さんの音づくりは、今日もどこかの会場で、静かに、やさしく、誰かの記憶を包み込んでいます。
ハピ子