“声の表現者”へ、また一歩。

「“声”って、こんなにも人の心を動かせるんだ」。

そう気づいたのは、中学時代に劇団四季のミュージカルを初めて観たあの日でした。伊藤美里さんは、2024年夏から能力検定振興協会で司会を学んでいます。とはいえ、彼女の中で「声で表現する」ことへの探求は、ずっと前から始まっていました。

「声」を極めたい。歌うこと、話すこと、そして届けること

「高校2年の冬に、進路を本気で考え始めたとき、自然と“音楽大学を受験しよう”という気持ちになっていました。中学生の頃に出会ったミュージカルの衝撃が、心のどこかにずっと残っていたんです」

音楽大学では声楽を専攻。オペラや歌曲を英語で歌い、言葉と旋律の融合に魅了されながら「呼吸と声で表現する」ということに、深く向き合った4年間。美里さんにとって、歌うことは自己表現そのものであり、そこに確かに人生を懸けていた時間がありました。

「声の力を、もっと広く、もっと多彩に活かしたい」。卒業後、その思いは“歌う”から“話す”へと自然にシフトしていきます。

そして出会ったのが、“ブライダル司会”という仕事でした。

「まさに“これだ!”と思いましたね。自分の声で、目の前の人たちに直接想いを届けられる。しかも結婚式という人生で最も大切な瞬間に関われるなんて。これは特別な仕事だと思いました」

司会と音響のアンサンブル

能力検定振興協会で学ぶようになってからは、司会研修と並行して音響オペレーションも学びました。音響のスイッチひとつで会場の空気が一変する。初めて機材を扱ったときは、怖さと緊張で手汗が止まらなかったといいます。

「でもある日、司会と音響がピタッと合って、“会場全体が一つになった”と感じた瞬間があって。その時『これはアンサンブルだ』って思ったんです。まるで歌手とピアニストの関係のように。声とタイミング、空気の読み合い…。音大で学んだことがそのまま生かされている感覚でした」

一方で、司会としての成長には、意外な“つまずき”も。

「“司会っぽく”声を張って話すと、逆に違和感があるって言われたんです。それがすごく衝撃でした」

それまでは「舞台に立つぞ」というスイッチを入れて話していた彼女。でも、阿久津先生からの「知り合いに話しかけるように」というアドバイスで大きく視点が変わります。

「歌っていた頃は“作り上げる”ことを意識していました。でも司会では“自然体”でいることが求められる。それが一番難しくて、でも面白いんです」

今も日々の研修でその“自然さ”を追い求めながら、少しずつ声の可能性を広げています。

結婚式という“ドラマ”に立ち会うこと

現在の伊藤さんのステップを10段階で表すなら、「3くらい」だと本人は話します。でも、その言葉には焦りではなく、期待と誠実さがにじんでいます。

「まだまだ未熟ですが、それでも毎週の現場で、心から感動して泣いてしまうんです。結婚式って、本当に奇跡みたいな時間だなって」

音響の現場で、その瞬間を支えながら涙をこらえる。祝福の気持ちが、音にも声にも自然と乗っていく。

「誰かの人生が垣間見えて、あたたかい気持ちになれる。だから私も心からお祝いしたい、そう思える気持ちが、いい現場づくりに繋がっていると思います」

“話して、歌って伝える”声の表現者を目指して

オールディーズが好きで、音楽家メノッティの作品にも惹かれる伊藤さん。最近ではヒップホップの面白さにも開眼。音楽のジャンルを問わず、知人のプレイリストをもらっては、未知の音楽に耳を傾けるのが日課です。

「音楽って、本当に面白い。表現の世界に正解はないけれど、“届いた”と感じる瞬間がある。それは歌も司会も同じだなって思います」

将来の夢を聞くと、はにかみながらこう答えてくれました。

「“話して、歌って伝える”声の表現者になりたいです」

言葉を選びながら、丁寧に話す姿に、伊藤さんの芯の強さと柔らかさが同居しているのがわかります。

「現場で働きながら学べる。本当によかった。」

「表現を仕事にするなんて難しいかな」と思っていた頃、偶然目にしたブライダル司会の仕事。そして出会ったのがハセガワエスティでした。

「阿久津先生から『司会のスキルは一生ものよ。』と言われたとき、すごく心に響いたんです。ここでなら、自分の声の力をもっと磨けると思いました」

入社後は音響研修も始まり、今では現場でオペレーションもこなしながら、司会者としての歩みも着実に進んでいます。支えてくれる先輩たちへの感謝を何度も口にする姿から、彼女がこの職場に誇りを持っていることが伝わってきました。

「悩んでいた自分に、今の私を見せてあげたいです。働きながら学べるのが本当に良かった。これからもっと多くの人に、“声”を通して幸せを届けられるように頑張りたいです」

お話の最後の伊藤さんの言葉が印象的でした。

“自然体であることが、一番難しい”

でもその難しさに向き合える彼女だからこそ、心に届く声を持っているのだと思います。

ハピ子

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