「音響の世界に踏み出したのは、『音楽が好き』という純粋な思いからでした。」そう話すのは音響講師の井上 傑(いのうえ すぐる)さん。
大阪の音響専門の学校で学び、卒業後はホテルやイベント会場に常駐する技師として、経験を積んできました。
「PAの基本から、映像機器の設営、照明の基礎。現場のすべてが学びで、毎日が修行のようでした。」と井上さんは振り返ります。
その後、名古屋に拠点を移し、名古屋を中心とした活動を続けます。音響・映像・照明の全てを扱う技師として10年間経験を積んだことは、現在の仕事にとっても大きな財産となっていると言います。
多様な現場で育まれた技術と視野
イベントや学会、パーティ、婚礼など、多様な現場ではそれぞれ求められる技術が異なります。毎日が学びの連続。音響の基礎はもちろん、映像機材の扱い、照明の演出、進行管理など、現場を動かすためのスキルは多岐にわたります。
「ひとつの仕事でさまざまな技術が身につく。それが音響技師の面白さでもあります。」と井上さんは話します。
この経験が、現在のブライダル音響という専門領域でも大きな強みとなっています。
ブライダル専門の音響へ——新しいステージへ
その後、井上さんはHASEGAWA S.Tに入社し結婚式場の音響・映像・照明を専門に扱う仕事へとステージを移します。お客様との打ち合わせから当日のオペレート、新人スタッフの育成まで担当し、技術者でありながら“式全体を支える存在”として現在は活躍しています。
「ブライダルは、人生で最も大切なシーンのひとつ。音の力が、その瞬間をより特別なものにすることを深く実感できる現場でもあります。」
スタッフ全員で創りあげる“特別なシーン”
井上さんがこの仕事に大きなやりがいを感じるのは、スタッフ全員がひとつになり、感動的なシーンが完璧に決まった瞬間。
新郎新婦の動き、司会者のコメント、照明の変化、会場の空気。全体を見渡しながら、曲のサビをクライマックスに合わせるために秒単位で調整を行う。
「全員のタイミングがジャストに合った時、まるで映画のワンシーンが完成したような美しさがあるんです。その瞬間はスタッフにとって至福の記憶となります。」
音響オペレーターが担うチームの要
音響オペレーターというと、「機材を操作する技術者」という印象を持たれがちです。しかし、アイコンタクト、司会者やサービスキャプテンとの連携、進行の把握。ときにはディレクターのような判断も求められます。このようなスキルはすぐに身につくものではありませんが、井上さんは自信をもってこう言います。
「音響の仕事は個人プレーと思われがちですが、実際はチームプレーがとても重要です。音響席は全体を見渡せる位置にあるので、連携のハブになることも多いんですよ」
これからチャレンジする方へ
音で場面をつくり、感動を生み出す。
チームで一つの空気を作り上げる。
そして何より、「一生の思い出に関わる」ことができる。
ブライダル音響の現場には、技術職でありながら人の心に寄り添う、特別な仕事の魅力が詰まっています。
井上さんが最後に、これから音響を学ぶ人へこんなメッセージをくれました。
「専門技術は、ゆっくり身につけていけば大丈夫です。私たち講師陣が、一つひとつ丁寧にお伝えします。音で感動を届けるという仕事は、本当にやりがいがありますよ。一緒に素敵なシーンを創っていきましょう。」
映画のシーンのような素敵な瞬間を創り上げていくブライダル音響の仕事。
お話を伺うだけで楽しい気分になるひと時でした。
ハピ子