披露宴会場に流れる一曲。
司会者のひと言。
そのわずかな“間”や“空気”によって、会場の雰囲気が大きく変わる瞬間があります。
今回お話を伺った持田健史さんは、そんな結婚式の空気を「音」と「言葉」で支えてきた存在です。現在は司会・音響の両分野で活躍しながら、講師として後進育成にも携わっています。
インタビューを通して印象的だったのは、持田さんが結婚式という仕事に対してとても誠実に向き合っていること。そして“人を育てること”にも真剣に向き合っていることでした。
持田さんがこの業界を目指したきっかけは、学生時代に熱中していたバンド活動でした。音楽に夢中だった経験から「音響の仕事に進みたい」と考え、専門分野を学ぶ道へ進学。進路を模索していた時、学校に掲示されていた求人票との出会いが、ブライダル業界への入口になったそうです。
2003年にHASEGAWA S.T.へ入社後、約20年間にわたりブライダル音響の現場を経験。そして社長から「司会もやってみてはどうか?」という言葉をきっかけに、新たなフィールドにも挑戦しています。
音で感情を動かす、ブライダル音響の世界
持田さんのお話の中で特に印象的だったのが、“音”が持つ力についてでした。
それまで流れていた音楽の音量を少しずつ落とし、静かな楽曲へ切り替える。すると賑やかだった会場が自然と静まり返る。反対に、テンポの良い音楽を大きめの音量で流すと、拍手や手拍子が起こり、会場全体の熱量が一気に高まっていく。
「空間を支配している気持ちになれるんです」
そう笑いながら話してくださいましたが、その言葉の奥には、音響という仕事の奥深さと責任感が感じられました。
結婚式は、目に見えない“感情”を扱う現場です。
だからこそ、音楽の入り方、音量、タイミング、司会者の声色ひとつで、その瞬間の記憶の残り方まで変わっていきます。
「同じ結婚式は二つとない」と持田さんは話します。
新郎新婦も、ご家族も、ゲストも毎回違う。その日だけの空気があり、その場だから生まれる感情があります。だからこそ、毎回新しい気づきや学びがあり、それがやりがいにつながっているそうです。
“教える”ことで見えてくるもの
現在、持田さんは講師として若手育成にも力を注いでいます。教える立場になって感じる難しさについて伺うと、
「自分ではできることを、他の人が同じようにできるとは限らない」
という言葉が返ってきました。目標は同じでも、人によって得意な方法や成長のスピードは違う。その人に合った伝え方を探しながら向き合うことの大切さを、日々感じているそうです。
一方で、教えた内容を現場で実践し、「うまくいきました!」と笑顔で報告してくれた時は、本当に嬉しい瞬間なのだとか。そんなエピソードを話す持田さんからは “教える人”としての優しさや包容力が伝わってきます。
そんな持田さんの座右の銘は、
「Roma wasn’t built in a day(ローマは一日にして成らず)」。
中学生時代、部活動の監督から与えられた言葉だそうです。
華やかに見えるブライダル業界ですが、実際は積み重ねの連続。機材知識、進行理解、言葉選び、気配り、タイミング…。小さな経験の積み重ねが、少しずつ“現場力”になっていきます。
その言葉は、これから業界を目指す人へのメッセージのようにも感じられました。
“好き”の先の新しいフィールドへ
持田さんは高校時代、友人に勧められて出会ったMaximum Overdriveに衝撃を受けたそうです。
それまで聴いていたJ-POPやヴィジュアル系とはまったく違う、速いドラム、歪んだギター、英語詞の世界。そこから洋楽ロックやテクノ、ヒップホップなど、さまざまなカルチャーに触れていったといいます。
そうした音楽体験の積み重ねが、現在の感性や現場づくりにもつながっているのかもしれません。
また、HASEGAWA S.T.については、「ジャンルの枠にとらわれず、いろいろなことに挑戦できる環境」と話していました。
実際に持田さん自身も、音響から司会へとフィールドを広げています。ひとつの専門性を深めながら、新しい可能性にも挑戦できる。それはこの仕事の大きな魅力のひとつでしょう。
ちなみに、司会を始めてからは「良い声ですね」と言われることが増えたそう。少し照れながら話してくださる姿も印象的でした。
結婚式は、一日限りの本番です。
やり直しはできません。
だからこそ、その一瞬に全力で向き合うスタッフの存在が、特別な時間を支えています。
“音”で空気をつくり、“言葉”で想いを届ける。
持田健史さんのお話から、ブライダルという仕事の奥深さと、人の心を動かす現場の魅力を改めて感じることができました。
ハピ子